朝日新聞の尾崎千裕記者(当会の賛助会員でもあります)の4月3日の記事です。
先日の岡山での上映会にも駆けつけてくれました。
「風化させぬ」思い強く
映画「新・あつい壁」(中山節夫監督)をみた。ハンセン病とされた男性が殺人罪などに問われ、無罪を訴えながら死刑となった50年以上前の実話に基づく作品で、07年から各地で巡回上映されている。主人公のフリーライターは、事件を調べるうち、差別や偏見は現在も続いていると気付く。しかし一方で、回復者から「ハンセン病問題は風化しているように感じる」という声をよく聞く現実もある。
県内に二つの国立療養所がある岡山県が3月、ハンセン病に関する意識調査の結果を発表した。昨夏、15歳以上の県民約2千人を対象に実施した。「病名を聞いたことがある」人は97.3%だったが、「どのような病気か知っている」と答えた人は44.3%。5年前の前回調査から5.9ポイント減少した。
国の隔離政策を違憲とした熊本地裁判決から、5月で7年。この間に全国の療養所で1500入以上が亡くなった。現在、計2890人の入所者の平均年齢は79歳。入所者の減少で医師や職員が減らされ、病養所の「立ち枯れ」がこわい。
こうした状況を打ち破ろうと、入所者らでつくる「全国ハンセン病療養所入所者協議会」(全療協)などが「ハンセン病問題基本法」の制定を求めている。現在の法律では療養所の施設を入所者以外の人は使えない。新たな法制定で医療、福祉施設、歴史公園などに整備して一般にも開放し、療養所を開かれた場所にしようというねらいだ。もちろん、差別や偏見の解消は大きな柱で、法案には国や自治体の責務も盛り込まれている。
入所者や退所者、支援者らは再び立ち上がり、昨年夏から街頭や映画上映会などで署名活動を続けている。目標は100万人。当初は「夢のような数字」だったが、3月半ばについに50万人を超えた。全療協の神美知宏・事務局長は「無関心な世間の空気が署名活動で少し変わってきた。この問題はまだまだ終わらない。人生をかけて最後までやる」と言う。
この声に国や私たちがどこまでこたえられるのか。時間はあまりない。 (尾崎千裕)
(朝日新聞 2008年4月3日夕刊 「単眼複眼」)
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