山下道輔著・柴田隆行編の「ハンセン病図書館 歴史遺産を後世に」が,日本評論社から発刊されました。
「ハンセン病図書館」は,国立療養所多磨全生園にありました。
図書館設立構想が具体化したのは,多磨全生園入所者自治会が再建された翌年(1969年)に遡ります,この年は,多磨全生園創立60周年にあたる年であり,60周年記念事業として,自治会役員とされていた松本馨さんが,「ハンセン病のこれまでの苦難の歴史を綴った患者の書いたものが広く役立つ時代がきっとくる。そのために資料を保存する施設を造ろう」と提案したことに端を発します。その後,ハンセン病資料の収集・整理を実際に担当されたのが,本書の著者の山下道輔さんです。
1977年春,当時自治会長であった松本馨さんは,「いのちの初夜」を書いた北條民雄氏がかつて住んでいた「秩父舎」の跡地に,ハンセン病図書館を建設にこぎつけました。
そして,多磨全生園内に併設されていた「高松宮記念ハンセン病資料館」から,現在の「国立ハンセン病資料館」にリニューアルオープンすることになったことを契機として,多磨全生園入所者自治会は、「ハンセン病図書館」を閉鎖し、資料をすべて国立ハンセン病資料館に移管することを決議しました。
その結果,国立ハンセン病資料館のリニューアルオーブンから1年が経過した2008年3月末をもって,ハンセン病図書館は,閉鎖されました。
本書には,「ハンセン病図書館」設立にかけた松本さんや,その意志を継承した山下さんの思いや苦労,ハンセン病療養所における図書館の役割などが,くわしく書かれています。
是非,一読してみてください。
PR
コメント